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いま、第5戦ヨーロッパGPの後にこのコラムを書いている。今年、今までのところ僕らは期待通りの結果が出せていない。2006年はどのレースでも優勝争いをしたいと思っていたのにそれができていない。でもそれはマシンのスピードが足りないからではない。では何が原因なのか。それはレースのたびにトラブルに見舞われることだ。決まって何かが起こって僕を邪魔する。まず開幕のバーレーンではクラッチの滑り。メルボルンではタイヤの表面温度がうまく上がらなかった。イモラではピットストップでトラブルがあって、ニュルブルクリンクではエンジンの故障。ハイレベルなチーム同士が戦うF1では、1つでもトラブルがあれば優勝など望めない。でもサンマリノGPでのピットのトラブルについては誰も責めるつもりはないよ。どのレースでもメカニックは精いっぱい頑張ってくれている。僕がこのチームに入ってから3年半の間、文字どおり何百ものピットストップを完璧にこなしてくれたんだ。1回くらい悪いときがあったって、大した痛手じゃない。
   
イモラでの最初のピットストップでは右リアタイヤの作業に手間取って5秒ロス。さらに2回目のピットストップでは、燃料ホースが取り外される前にロリーポップが上がったため僕はマシンをスタートさせてしまった。燃料の溢れはすぐに止まったけれどそれでさらに15秒をロスした。それをコースで取りかえすのは無理だろう。でも何が一番悔しかったかといえば、トラブルさえなければ表彰台に上れたはず、ということだ。マシンのスピードも戦略も申し分なかったからね。
レースの翌日は英国のブラックリーにあるチームファクトリーでレース後の恒例ミーティングに参加した。ファクトリーのスタッフ全員が集まって、開幕から 4戦で良かった点と悪かった点を分析した。この話し合いは効果絶大だった。スタッフ全員が自信を取り戻したからね。僕も今、RA106はスピードもあって今年中に優勝できる力を持ったマシンだと確信している。
ファクトリーからシルバーストーンへ行って2日間テストに参加した。初日はレインタイヤをテスト。2日目は新しい空力やメカニカルなパーツをいろいろ改善できた。僕がこなしたのは130ラップ。イモラは残念だったけれど、このテストでマシンの速さと信頼性が確認できたから、スタッフの士気はまた高まったよ。
シルバーストーンで感じたことなんだけど、今年のF1マシンは特に高速コーナーでのスピードがすごい!たとえばコプス。ドライコンディションでは去年より時速20kmもスピードが速くなっている。信じられないよ。V8エンジンが今年導入されたのはスピードを遅くするためだったのに、もうこんなに速くなっている。
シルバーストーンからモナコの自宅に戻って、週末はトレーニングをしたり友達や家族と過ごしたりした。やっぱり自分の家はいいね。今年は長いこと家を空けていたからなあ。バーレーン、マレーシア、オーストラリアと転戦している間は一度もヨーロッパに帰らなかった。オーストラリアの後すぐにバレルンガとバルセロナでテスト。それからサンマリノGPだ。今回何カ月かぶりにやっと本当の休暇がとれたというわけなんだ。
   
でもトレーニングをしたりくつろいだりしてばかりもいられなかった。ニュルブルクリンクの前週の火曜日には、今年の終わりに出版する自伝写真集のための撮影があった。モナコのいろいろな場所で撮影した。僕の愛車、ホンダS2000に乗ってコースを走ったりもしたよ。その車での撮影中、面白いことがあったんだ。グランドホテルに着いたらなんとニコ・ロズベルク(彼もモナコに住んでいる)と鉢合わせして、しかもその時、彼も僕と同じようなことをしていたんだ!
ヨーロッパGPについては、もちろん完走できなくて残念だった。でもエンジンについてはあまり心配していない。HRDのエンジニアたちには100%信頼を置いている。彼らなら問題点を見つけだして解決してくれるよ。それより、最初のタイヤセットのとき、マシンが予測できない動きをしたことが問題だった。
僕は6番手からうまくスタートをして、キミ・ライコネンと3つのコーナーに渡ってバトルを展開し、ついに彼を抑えこんだ。あれは満足だった。この時点ではハンドリングには問題がなかったのに、2周目にセーフティカーが入ったところから、マシンのバランスが悪くなり操りづらくなった。リスタートまでに何とかタイヤを温めようと手を尽くしたけれど、フロントのグリップがなくライコネンの追撃を交わすことができず、4周目、シケインの手前で抜かれてしまった。それでも僕は積極的に攻めて、21周目に1回目のピットストップをした時点で2位にまで浮上していた。タイヤを2セット目に替えたら途端にハンドリングが良くなって自信が出たから、ガンガン攻めた。それなのに28周目、ほとんど何の前触れもなくエンジンがブローしてしまった。
とにかく今はスペインGPに向けて気持ちを切り替えなければ。バルセロナはチャレンジングだし、これまで何度もRA106をテストしてきたサーキットだから、僕らがどんなに速いか見てもらえるはずだ。
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