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    §アメリカGPでのことにこれ以上言うことはない

6月のコラムを書いてから、F1ではいろいろなことが起こった。まずは、カナダGPのことから始めよう。

あのレースは複雑な気持ちだった。僕は、F1キャリアで2度目のポールポジションをゲットでき、すごく興奮した。それまで何週間もやってきたことが実を結んだ証拠だからね。それにレースでは、僕が積んでいた燃料の量を知って驚いた人も多かったんじゃないだろうか。何たって最初のピットストップは、同じフロントロースタートのミハエル(・シューマッハ)より3周も後に入ることができたんだから。でも結局、不本意な結果になってしまった。あの47周目でのクラッシュ・・・・。あれは完全に僕のせいだった。自分でも腹が立ったよ。僕はそんなにたくさんミスをするドライバーじゃないと言うのに!

こういう場合、どんなドライバーも、まずチームに謝って、それから前向きに頑張るしかない。ラッキーだったのは、モントリオールからインディアナポリスまでの間、いろいろ忙しかったおかげで気持ちを切り替えられたことだ。

そうそう、CBSのF1ドキュメンタリー映画の撮影でロサンゼルスに行ったんだけど、そこでヒュー・ヘフナー(雑誌“プレイボーイ”の創刊者)に会ったよ! ナイスガイみたいだったな。まあ、F1のことをどれくらい知っているかは分からないけどね。

その後に、アメリカGPのインディアナポリスに行った。ご承知のように、僕たちはレースをしなかった7チームのうちの1チームだ。もちろん、レースができなかったことにはとてもがっかりしたよ。でも、金曜日にラルフ(・シューマッハ)の事故が起こったターン13にシケインを設置しないままでは、安全性を考えて引き下がるしかなかったんだ。

もう今は、そのことについてこれ以上言うことはないよ。ただ、インディアナポリスのサーキットとアメリカの観客に謝罪の気持ちを表すため、シーズン終了前にもう一度、インディアナポリスでノンタイトル戦をしようという話については、素晴らしいと思う。でもそのレースの運営は、慎重にやらないとね。それに何か戦う目的のようなものがなければ、ファンのみんなも見にきてくれないんじゃないかな。

フランスGPでは、マシンに新しい空力パッケージを導入した。ものすごく良くなったよ。フロントもリアもグリップが良くなって、エンジニアもラップタイムで約コンマ2秒速くなったと言っていた。それと、さらに良かったのが、レースディスタンスでもマシンが今まで以上にタイヤに優しくなったこと。だから運転していても終始安定した走りができた。

マニクールではチームメイトの琢磨も好調だった。予選は5位になったし、序盤の走りも良かったよね。僕は4位に入ることができたし、あのリザルトで、チームの士気がぐんと上がったよ。これが僕たちの底力。今年初めてのポイントを獲れたわけだけど、それだけではなくて、やってきただけの成果を色々な場面で出せたからね。このグランプリが僕たちチームのターニングポイントになってくれればいいと、心底願っているよ。

インディアナポリスの後はヘレスに行って、マニクール用の空力パッケージを初テストしたんだ。ものすごく進化しているという手応えをすぐに感じた。でもレースで走ってみるまでは、期待めいたことを言わないようにしていた。テストドライバーのアンソニーも、この新しい空力パッケージを試してすごい進化だって言っていたよ。


§フランスGPの成果をターニングポイントに

テストが終わったらイギリスに直行して、グッドウッド・フェスティバル・オブ・スピードに出席したんだ。デビッド・クルサードも同じルートで行くことになっていたから、自家用機に同乗することにした。その方が時間の節約になると思ってね。ところが、離陸してすぐに、キッチンの方から何だか焦げ臭い匂いがしてきたんだ。パイロットが、危険かもしれないからすぐマドリッドの空港に着陸したいと言ってきた! 結局あとで、それはコーヒーメーカーの匂いで、別に大したことはなかったって分かったんだけどね。でもその時は、僕もデビッドも慌ててイギリス行きの便を予約しなければならなかったんだよ。

今まで何度もグッドウッド・フェスティバル・オブ・スピードには出場しているけれど、これは本当に素晴らしいイベントだと思う。ファンはマシンやドライバーのすぐ近くまで来られるし、リラックスした雰囲気でみんなが楽しんでいる。今年のイベントは特別で、HondaのF1初優勝の40周年記念ということで、Hondaがホストメーカーになったんだ。Hondaの歴代のF1マシンをモニュメントにして、グッドウッドハウスの前に展示された。

僕は2台のマシンで、グッドウッドハウスの前のヒルクライムコースを走ったんだ。最初はブラバム・ホンダ・フォーミュラ2。1966年にジャック・ブラバムが乗って、11戦を勝ったマシンだ。運転しやすくて驚いたよ。技術的にも素晴らしい。あのマシンが無敵だった理由が分かったね。あの1リッターエンジンの回転速度を上げると、今のF1マシンと同じような音が出るんだ。何しろ11,500rpmまで回るんだから!

それからB・A・R Honda 007に乗った。安全面の理由でドーナツターンはやってはいけないって言われていたので、ファンに喜んでもらえるのはバーンアウトくらいだったけど、僕自身はすごく楽しかったから、見ている人たちも楽しんでくれたならいいな。

このところのレーススケジュールはすごくタイトで、すぐに次のレースが来るっていう感じだ。7月だけで4つもグランプリがあるんだからね。次はシルバーストーンだ。僕にとってはいろいろな意味で特別なレース。第一に、エキサイティングな高速セクションがあって、走るのにすごくチャレンジングなサーキットであること。第二に、母国グランプリだから。

イギリスのファンの前で、思いっきり良い走りを見せたい。フランスでの走りを考えると、マシンには絶対的な力がある。どうか僕の幸運を祈ってほしい。
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